【コラム】月下美人が教えてくれること
平素より格別のご高配を賜り誠にありがとうございます。
いつもの景色が少し違って見える夜があります。
まぶしい太陽の下ではなく、静かな夜の時間にだけ咲く花があるからです。
まるで月明かりを待っていたかのように、白い花びらをゆっくりと広げていきます。
であう機会が限られているからこそ、その美しさは特別なものになるのかもしれません。
あたり一面に広がる甘い香りは、開花の瞬間をそっと知らせてくれます。
りっぱな花を咲かせても、月下美人の見頃はほんの一晩だけです。
がんばって育ててきた人ほど、その短い時間を大切に見守ります。
ときには開花の夜を見逃してしまい、翌朝しぼんだ花を見て残念な思いをすることもあります。
うつくしいものが永遠に続かないからこそ、人の心は動かされるのでしょう。
ごく短い時間のために力いっぱい咲く姿は、どこか私たちの生き方にも重なります。
ざんしょが残る9月の夜に咲くその花は、季節の移ろいも感じさせてくれます。
いのちの長さではなく、どう輝くかが大切なのだと教えてくれているようです。
また来年も咲くと分かっていても、その夜の感動は二度と同じではありません。
しずかに開き、静かに役目を終える姿には特別な風情があります。
たった一晩の花だからこそ、多くの人に愛され続けているのではないでしょうか。
